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DPTワクチン接種後副反応、健康調査のまとめ


 1997年4月の開院以来、2002年3月までの5年間に5836例(男2999、女2837)にDPTワクチン接種を行ってきました。(化血研4054、北里1560、武田182、ピケン40)。
 年度別、期別的にみますと次のようになります。
 97年754例 98年1078例 99年1304例 00年1407例 01年1293例
 1回目1591例 2回目1545例 3回目1440例 追加1260例
 5836例の内4991例(85.5%)で経過表を回収することが出来ました。この様な調査では驚異的に高い回収率で、皆様方のワクチンに対する関心の深さを反映しているものと思います。今回やっとまとまった結果を報告致します。

グラフ1

 グラフ1)は接種例5836例を年齢別にみたものです。3-11mは1ヶ月毎に、12-23mは3ヶ月毎に、24-35mは6ヶ月毎に、3歳以降は1年毎になっています。
 3m111例、4m234例、5m343例、6m449例、7m469例、8m461例、9m405例、10m389例、11m299例、12-14m513例、15-17m284例、18-20m291例、21-23m344例、24-29m497例、30-35m298例、3歳281例、4歳99例、5歳42例、6歳24例、7例2例、8歳1例(グラフでは6歳以上27例でまとめてあります)となっています。
3歳までの接種が殆どです。4歳以上168例でみると1回目14例、2回目16例、3回目18例、追加120例で、追加を忘れていて、この時期にという例が多いように思われます。

グラフ2

 グラフ2)は接種例を接種した月別に分けてみたものです。また一番上の青色部分は調査表が回収出来なかった例を、それ以下は回収できた例を示しています。黄色部分は副反応が無かった部分を、それ以下は何らかの副反応が見られた群を示しています。最下段の紫色部分は発熱例である事を示しています。
 月別接種数をみてみます。4月(388例)5月(323例)6月(468例)7月(646例)8月(627例)9月(687例)10月(479例)11月(217例)12月(340例)1月(543例)2月(481例)3月(637例)でした。ポリオワクチン時期に少なく、麻疹ワクチンと同じく、最も接種数が少なかったのは11月でした。これはインフルエンザワクチン接種との関係もあると思われます。
 ここからは経過表が回収出来た4991例について検討します。
 副反応ありと回答のあった率をみてみます。
4月125/314(39.8%)、5月148/283(52.3%)、6月205/411(49.9%)、7月272/551(49.4%)、8月252/539(46.8%)、9月267/593(45.0%)、10月166/384(30.2%)、11月67/187(35.8%)、12月89/295(30.2%)、1月186/472(39.4%)、2月175/426(41.1%)、3月207/536(38.6%)
 発熱のみに注目してみます。
4月35/314(11.1%)、5月34/283(12.0%)、6月62/411(15.1%)、7月78/551(14.2%)、8月50/539(9.3%)、9月62/593(10.5%)、10月33/384(8.6%)、11月19/187(10.2%)、12月36/295(12.2%)、1月48/472(10.2%)、2月35/426(8.2%)、3月58/536(10.8%)
 副反応率でみてみますと、30.2%-52.3%と高い数字が出ています。インフルエンザワクチンの2歳(13.9%)、3歳(20.3%)と比較しても倍位あります。接種した内、少なくとも3人に1人という計算になります。副反応の内容では注射部位の発赤、腫脹がその多くを占めています。
 発熱率でみると8.6-14.2%でインフルエンザワクチン(10.4-13.8%1-3歳)と同じで麻疹ワクチン(15.1-28.9%)と比べると半分位です。
 静岡市では夏場の予防接種は避けるようにという指導も行われているようです。しかし今回のDPTワクチンの検討では特に夏、8月に副反応率、発熱率が高いという事はありませんでした。夏場は無菌性髄膜炎の流行が時にあり、注意は必要です。けれど冬にはインフルエンザあり、脳症も心配です。結論としては季節にとらわれず、現場の医師が地域の流行に注意して、子供の状態を把握し、自分の信念に基づいて接種するということになるでしょうか。

グラフ3
グラフ4
グラフ5
グラフ6

 グラフ3)-6)は期別的に接種後日別に発熱例をみたものです。なかには発熱が数日続く事もあります。その場合初日より2日目、3日目の方が体温が高いこともあります。このグラフは発熱が始まった日を示し、経過の中での最高体温を示している事を御了解下さい。
 期別に発熱率をみてみますと下記のようになり、特に差は見られません。
 1回目 159/1449(11.0%)
 2回目 156/1326(11.8%)
 3回目 121/1191(10.2%)
 追加 114/1025(11.1%)
 いずれにおいても接種日当日から14日間ずっと毎日発熱例がみられます。追加の時は2日目に有意高く、39度以下が多く、他の日はおしなべて少なくばらつきもありません。2日目がワクチンによる発熱だなと思わせます。しかし1回目、3回目では特に接種後2日目に集中する傾向もなく、病気による発熱例のためと思わせますが、発熱率では各期とも差はありません。
 発熱例の中で特に診断名が記載されていものを期別毎にまとめてみました。
 1回目:

突発性発疹16例(4m1例、5m1例、6m2例、7m3例、8m6例、9m2例、12m1例)
手足口病1例(1y1m)、水痘1例(2y4m)
入院1例(嘔吐下痢症6m、6日目入院)

 2回目:

突発性発疹18例(4m1例、5m1例、6m3例、7m4例、8m4例、9m2例、11m1例、13m2例)
手足口病2例(2y4m、3y)、インフルエンザ3例(11m、1y2m、3y4m)
中耳炎1例(1y)
入院2例(気管支炎6m、11日目-14日目)
(肺炎1y1m、18日目-26日目)14日目以降の事ですが、特別入れました。

 3回目:

突発性発疹9例(6m2例、7m1例、8m3例、10m1例、11m1例、13m1例)
手足口病2例(9m、1y2m)、水痘1例(5y1m)
入院1例気管支炎(1y6m、5日目入院)
追加:突発性発疹1例(1y4m)、インフルエンザ3例(1y9m、y3m、2y11m)
水痘1例(1y10m)、オタフクカゼ1例(3y9m)、中耳炎1例(2y4m)
熱性痙攣1例(2y7m、8日目)
入院4例発熱(2y0m、15日目入院)、喘息性気管支炎(2y1m、4日目入院)
喘息性気管支炎(2y1m、6日目-10日目入院)
気管支喘息発作(4y4m、13日目入院)

 麻疹等の生ワクチンでは接種後1週間で発熱しやすく、DPT等の不活化ワクチンでは副反応としての発熱は接種後24-48時間にみられると言われています。
 接種後の発熱でよく電話がかかってきますし、診察時にも実は何日か前にDPTを受けたのですが、その為の発熱ではないでしょうかと聞かれる事もよくあります。短時間の間にお母さん方に納得していただける回答が出来る自信はありません。又特に48時間以内の発熱ではこれはワクチンの副反応、これは風邪と断定出来る自信もありません。しいて言うならワクチンの副反応なら39度を越える事も少ないし1日で解熱する事が多いでしょう。39度以上の発熱が2日も3日も続けば、それはワクチンのせいというより、病気(風邪?)の可能性が高いと思いますよ。
 皆様方と作ったこのパンフレットをみていただければわかるように1000人接種したら接種後2週間毎日少なくとも5-10人が発熱していますよ。おそらく2週間後も毎日5-10人は発熱しているのではないでしょうか。
 でものべ5836名に接種して熱性痙攣も1名だけですし、入院するようになったのも8名だけです。尤もその中で報告無かったのが845例あるのですが、その方々は何も無かったものと信じています、もし報告例以上の副反応例があれば今回の報告も意味がありません。如何でしょうか。

グラフ7

 グラフ7)は接種部位の発赤、腫脹の大きさを期別毎にみたものです。 
1回目340/1441(23.6%)
 不明86例、1cm以下93例、1-3cm以下150例、3-5cm以下10例
 5-10cm未満1例、10cm以上0例
2回目616/1326(46.5%)
 不明114例、1cm以下86例、1-3cm以下340例、3-5cm以下67例
 5-10cm未満7例、10cm以上2例
3回目341/1191(28.6%)
 不明90例、1cm以下55例、1-3cm以下158例、3-5cm以下30例
 5-10cm未満6例、10cm以上2例
追加 508/1025(49.6%)
 不明108例、1cm以下26例、1-3cm以下194例、3-5cm以下123例
 5-10cm未満39例、10cm以上18例

 不明例の合計が398と多いのですが、これは殆どが少しという記載ですのでほとんどが1cm以下群に含めてもよいと思われます。
 回数を重ねる毎に腫脹例が増えると予想していましたが、2回目で46.5%と高くなり、3回目で28.6%と低下しているのは意外でした。しかし2回目では1-3cm以下例が多かったように思います。追加では5cm以上も多くなり10cm以上も18例みられ、中には腕全体、肩から肘、肘から下までという記載も7例ありました。実際に受診していただいて湿布を施工した例も数例ありました。追加で10cm以上の18例を年齢別にみますと、1歳3例、2歳6例、3歳4例、4歳3例、5歳2例です。うち11例は追加のみの接種、残り7例で1-3の接種を確認しましたが1例が3回目で4cmとの記載があったのみでした。

グラフ8

 グラフ8)は接種後日数と腫脹、発赤との関係をみたものです。
 ほとんどが3日目までにおこっています。しかし1回目だけ7-11日にも発赤、腫脹がみられます。2回目以降にはほとんど見られません。乳児早期の特徴なのか、小さいからよくみているから気付かれるのか、よくわかりません。今後の検討課題だと思っています。
 その他の副反応としては1回目10例、2回目11例、3回目4例、追加8例での記載をとりあげました。内訳は蕁麻疹5例、発疹9例、嘔吐下痢15例、咳4例です。
 咳、鼻水、微熱(37.2度)位までは、お風呂も普通に入って、集団保育も普通にうけている状態なら接種を行っています。風邪だから予防接種を受けられないと決めつけないで、元気がよければ積極的に予防接種をうけて下さい。ただしそれはあくまでも当院での事です。全国的にもそうなのかは知りません。

まとめ
1)5年間でのべ5836例にDPTワクチン接種を行い、4991例85.5%で経過表をお送りいただく事ができました。
2)接種後の発熱率はインフルエンザワクチンと同程度で、麻疹ワクチンの半分でした。心配された熱性痙攣は1例しかみられませんでした。特に夏場に発熱が多いという事はありませんでした。
3)接種後の注射部位局所の発赤、腫脹は1.3回目では3人に一人、2回目、追加では二人に一人みられました。しかし多くは3cm以下でした。ただ追加では18/1000で10cm以上腫れる事があります。時には肩まで、上腕全体腫れて、湿布する事もありました。
4)DPTワクチンは局所が腫れやすいという事はありますが、百日咳、破傷風、ジフテリアの予防にはかかせないワクチンです。1期3回までは接種を受けていても、1年後の追加を忘れている例をみかけます。是非追加接種を忘れないようにして下さい。
5)皆様方からいただいたデータで作ったレポートです。自分では今までいろいろな質問を受けましたがこれが改めての正式な回答というつもりです。今後とも経過表の記載、送付を宜しく御願い致します。

H15年10月31日  まつもとこどもクリニック 松本延男

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