予防接種における副反応について正しくご理解いただくために

 

インフルエンザワクチン接種後副反応、健康調査のまとめ


 当院では97年4月開院以来、予防接種の副反応、経過を確認するため、すべてのワクチン接種に対して接種後2週間の様子を記載した経過表を郵送していただく事を御願いしてきました。

97年
98年
99年
00年
01年
02年
03年
04年
05年
07年
22例
395例
709例
1486例
3101例
2678例
3945例
4290例
5056例
5474例

この10年間で上記数インフルエンザワクチンを接種してきました。今回は2006年度の5474例のまとめです。使用したワクチンは化血研3708例、ビケン1766例です。この内3802/5474(69.5%)で回答をいただく事が出来ました。最初の5年間での回答率が81.1%、次の2年間で76.5%、その次の2年間で74.7%、そして昨年が69.5%と段々低下してついに70%をきってしまいました。非常に残念です。回答いただいた方々には心より御礼申し上げます。

接種回数別にみますと、1回接種者が3552名、2回接種者が961名となります。1回接種者が多いのは成人例の方が多い事にもよりますが、小児例でも、連続3年目接種から1回接種で十分という私の考えによるところが大きいと思います。又当院では1歳未満、65歳以上は接種対象外としています。これは1歳未満では接種効果が小さく、又当院のように接種者数の多い状況下では1歳未満はなじまないと考えるからです。又65歳以上は公的補助が受けられるようになりましたので、かかりつけ医での接種を御勧めするからです。
 さてこれから具体的な報告に入らせていただきます。
図1)は接種者4513名の方々がどの地区から接種にみえたのかを見たものです。これは今回始めて検討した項目です。駿河区2876例(63.7%),葵区852例(18.9%),清水区209例(4.6%)でした。焼津市,藤枝市はそれぞれ256名(5.7%)226名(5.0%)と清水区をこえる数でした。以下岡部町42例,島田市19名,掛川市9名,富士市8名,牧之原市4名,大井川町、函南町,磐田市が各3名,吉田町,御前崎市、由比町が各2名,浜松市、川根本町が各1名でした。

図1

図2)は接種者4513名を年齢別、性別にみたものです。1歳197名,2歳289名,3歳273名,4歳323名,5歳267名,6歳264名,7歳249名,8歳198名,9歳151名,10−19歳379名,20−29歳133名,30−34歳518名,35−39歳724名,40−49歳377名,50−59歳87名,60−64歳84名です。30歳台は数が多く、今回は30−35歳、35−39歳の二つに区切りました。
1歳197名から次第に多くなり、4歳が323名と最も多く、以後次第に減少していく傾向があります。30歳台は子供と一緒に接種される御両親のもので、母親の接種が多くを占めています。
 保育園、幼稚園では、御両親のインフルエンザ罹患に対する心配度、恐怖心が強いのに加え、園が強くインフルエンザワクチン接種を勧める事がこの接種数に関係していると思われます。小学生になると体力もついて、学年が進むにつれて心配度が減少して接種者も少なくなってくるようです。土日に接種を行う医療機関が少なく、学校を早退させてまでの接種を考えないのかもしれません。本当に学童にもインフルエンザワクチン接種を広く勧めるのであれば、1回接種量を0.5mlと増やして1回接種と言い切る方が、ワクチン接種の普及につながると考えます。そう考えると学童での2回接種は、私には昔の集団接種の遺物、集団接種を前提としたものとしか思えません。勿論その場合には現在の1500万本から2000万本へとワクチンメーカーによるワクチン増産が必要になります。

図2

図3)は18歳以下を接種回数にみたものです。2回接種率を年齢別にみてみます。1歳173/197(87.8%),2歳257/289(89.2%),3歳136/273(49.8),4歳129/323(39.9%),5歳76/267(28.5%),6歳46/264(17.4%),7歳39/249(15.7%),8歳31/198(15.7%),9歳26/151(17.2%),10歳16/109(14.7%),11歳11/81(13.6%),12歳7/81(86%),13歳0/27(0%),14歳3/30(10%,15歳8/17(47.1%),16歳1/16(6.3%),17歳0/11(0%),18歳1/5(20.0%)
 当院では学童では80%以上が1回接種です。連続接種3年目以上では1回接種という私の主張に賛成していただけた結果と思っています。これも本当は0.5ml1回接種としたいのですが、現在では法律上どうしようもありません。19歳以上で2回接種者は1名のみで、何とそれは私です。1回接種で十分、2回接種は必要ないと言いながら、ワクチンが余ったりしてついつい接種してしまいました。私の貧乏性のなせる所です。
 接種回数とインフルエンザ罹患との関係について気になるところです。インフルエンザ罹患の有無の結果報告をいただいたのは794/4513(17.6%)のみで、これだけでは数が少なすぎるので、これに昨年度当院でインフルエンザと診断した例を加えて別に解析。報告する予定です。そこで私なりの根拠を示したいと思います。

図3

図4)接種5474例のうち調査票の回答をいただいた3802例(69.5%)について副反応率を検討しました。473例、12.4%で何らかの副反応が報告されていました。ただし咳、鼻水の風邪も接種していますので、咳、鼻水は検討から除外しています。副反応としては、やはり発熱が一番問題となり、御両親方も気にされる所と思います。発熱率を年齢別にみてみます。
1歳38/269(14.1%),2歳43/401(10.7%),3歳23/286(8.0%),4歳26/313(8.3%),5歳16/220(7.3%),6歳12/206(5.8%),7歳5/196(2.6%),8歳6/154(3.9%),9歳1/120(0.8%),10-19歳4/273(1.5%),20-29歳1/85(1.2%),30-34歳4/391(1.0%),35-39歳10/519(1.9%),40-49歳4/248(1.6%),50-59歳1/61(1.6%),60-64歳1/60(1.7%)となっています。発熱率は6歳までは5%以上です。特に1歳、2歳では10%以上の高率になっています。7歳以降では0-3.9%と下がっています。現在、同時期に全ての年齢層にこれだけ接種されているワクチンはインフルエンザワクチンのみです。年齢層によって発熱率に大きな相違があります。特に1歳では14.1%というのは、ワクチンそのものによる副反応とはとても思えません。日本では1歳未満0.1ml、1−6歳未満0.2ml,6-13歳未満0.3ml,13歳以上0.5mlと年齢によって異なった4種類の接種量が決められています。よって余計に年齢層による発熱率の差をワクチンそのものに求める無理があります。これは4歳以下の小児では、風邪がはやりやすい10−12月に、2週間発熱なく、健康に過ごすことがいかに難しいことかを表していると考えます。6歳以下でもワクチンそのものによる発熱は2−3%であとは、殆ど風邪などの病気のまぎれこみと思います。

図4

図5)は発熱例195例(不明2例,38度未満53例,38-39度93例,39度以上47例)を年齢別にみたものです。6歳以下が多く、結構39度以上の発熱例が多いのが特徴です。これも先ほど述べたようにワクチンそのものによる発熱でなく、風邪などの病気による発熱を思わせます。

図5

図6)は195例の発熱例を10歳未満と10歳以上に分けて接種後日数別にみたものです。6例では接種後2週間の間に2回の発熱エピソードがあり、のべ201例となっています。
接種後日数は発熱初日で発熱は発熱期間の最高体温を、とっています。3,4日発熱が持続した例も多いので、接種後日数別の、その日、その日の発熱例は表の2,3倍はあります。接種日を1日目としています。接種後2.3日の発熱例が最も多いのですが、その後も毎日5−15名新たに発熱をきたしています。10歳以上は25/201で12.4%,10歳未満は176/201で87.6%です。10歳以上では発熱が非常に少ないことがわかります。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。ワクチン接種による副反応としての発熱は接種後24時間、せいぜい48時間と考えられます。そうするといかに、病気からの発熱が多いかわかっていただけると思います。接種後2,3日の発熱数から7−14日の平均発熱数を引いたものが、ワクチンによる発熱例であると思います。
 ただし当院では37.4度くらいまでは多少咳、鼻水がみられても、元気があればワクチン接種をしています。発熱といった場合、小児では37.5度以上、成人では37.3度以上を発熱として統計をとっていることを御了解下さい。
図6

図7)は接種後の局所の腫脹、発赤例114例(114/3802,3.0%)を不明3例、5cm未満76例、5−10cm未満30例、10cm以上5例に分けて年齢別にみたものです。
1歳1/26(0.4%)2歳14/401(3.5%)3歳11/286(3.8%)4歳9/313(2.9%)5歳10/220(4.5%)6歳10/206(4.9%)7歳7/196(3.6%)8歳9/154(5.8%)9歳4/120(3.3%)10-19歳2/273(0.7%)20-29歳1/85(1.2%)30-34歳7/391(1.8%)35-39歳18/519(3.5%)40-49歳9/248(3.6%)50-59歳0/61(0%)60-64歳2/60(0.3%)局所の腫れでは少しという記載があり、具体的にどう解釈したらよいのか困りました。また0.1,0.2cmならあえて副反応にしなくてもよいという思いもあり、0.5cm以上を対象にしました。
1歳では0.4%と腫れることは稀なようです。2−9歳では3−5%の頻度です。10歳から減少していますが、35−49歳で又少し上昇し3.5%程度の頻度となっています。概ね3−5%の頻度で接種部位局所の発赤、腫脹が見られています。 あるお母さんから、昨年10cm以上腫れたが、今年の接種はどうしたらいいかとの相談がありました。この質問に答えるべく2002-2006年の10cm以上腫脹した27例をコチラの一覧表にまとめてみました。

ワクチン接種後の局所の腫脹、発赤例の一覧はコチラ



・空欄はその年は当院でインフルエンザワクチン接種を受けていないことを示しています。
・@は1回目接種、Aは2回目接種を表しています。
・無は回答のあった報告書には腫脹の記載がなかったことをあらわしています。
・報告なしはワクチン接種を受けたが、報告書を送ってもらえなかったことを示しています。


結果としては10cm以上腫れる人はその後の接種でも同程度の腫脹を起こすことが50%以上の確率で予測されることがわかりま・す。原因はわかりません。他のワクチンでどうであったかまでは確認できませんでした。私としてはそのような方は、特に2年続けて10cm以上腫れた方は、今後インフルエンザワクチン接種をあきらめる事をお勧めいたします。

図7


図8)は発熱,腫脹以外の副反応のべ203例を検討したものです。
 ・局所の痛み、かゆみ  86例(明らかな腫脹に伴うものは除外してあります)
 ・腕全体の痛み     26例
 ・嘔吐、下痢      46例
 ・頭痛         20例
 ・発疹、蕁麻疹     13例(突発性発疹,溶連菌感染によるものは除外)
 ・身体のだるさ     12例
嘔吐、下痢は小児に多くみられています。接種後日数とも関係なく、これは副反応というより、風邪などによる胃腸炎症状と思われます。

図8

最後に接種後14日間に罹患しあきらかな病名のあったものを集計します。

 ・溶連菌感染症     8例(2歳1例、4歳1例、5歳1例、6歳2例、7歳2例、11歳1例)
 ・中耳炎        3例(1歳1例、2歳1例、4歳1例)
 ・水痘         2例(1歳1例、2歳1例)
 ・熱性痙攣       3例(1歳1例、2歳1例、4歳1例)
 ・オタフクカゼ     1例(5歳)         ・アデノウイルス感染   1例(3歳)
 ・仮性クループ     1例(1歳)         ・RSウイルス感染    1例(1歳)
 ・突発性発疹      1例(1歳)         ・ロタウイルス腸炎    1例(1歳)
 ・扁桃腺炎       1例(7歳)         ・てんかん発作      1例(9歳)
入院例は熱性痙攣4歳児の1例のみです。

 最後に報告書の作成が遅れ11月5日になってしまって、インフルエンザワクチン開始に間に合わなかったことを深くのお詫びいたします。皆様方にはいつもインフルエンザワクチン接種後調査に御協力をいただき、心より感謝しています。今回データをまとめるためにスタッフとともに、膨大な時間、労力をかけて整理し、パソコンに打ち込み、この報告書を作成しました。ここまでしている施設は全国でも当院だけと自負しています。この報告書はインフルエンザワクチン接種後調査に回答をいただいた皆様方と共に、作成したものです。皆様方に情報を還元したい、読んでいただきたいとの一途な気持ちからのものです。医療関係者を対象にしたものではありません。しかしこのくどくどした長たらしい報告書を何人の方に最後まで読んでいただけるかと思うと少し考えてしまいます。情熱だけでも感じていただければ幸いです。
接種前には、インフルエンザワクチンにはどんな副反応があるのでしょうか、卵アレルギーがありますが大丈夫ですか、とのいろいろな相談があります。又接種後には発熱した、腫れた、だるいがワクチンのせいではないかという電話での問い合わせが絶えません。私は短時間ではなかなかうまくお話が出来ません。
お渡ししたパンフレット、皆様と共に作ったこの報告書がその答えの全てです。インフルエンザワクチン接種後にはこの年齢ではこのくらいのことはあるのだという理解の上でワクチンを受けて下さい。


H19年11月5日  まつもとこどもクリニック 松本延男
 TEL 054-259-775 FAX054-259-7758 〒421-0132  静岡市駿河区上川原16-18

H20.年1月末にはHibワクチンがやっと発売になります。残念なのは任意接種扱いであることです。
これだけ世界で有用性、重要性が認められているワクチンです。日本でも3ヶ月から全乳児に接種すれば、毎年発生している500人の細菌性髄膜炎を10人レベルに抑えることが出来ます。インフルエンザで脳症が100−150起こると不安をあおっておきながら、毎年500人近く発症するHib髄膜炎については、何も国民に知らせようとはしません。
基礎免疫として3、5,7ヶ月、そして追加として、12−16ヶ月合計4回接種です。DPT と同時接種となる予定です。すでに7月の子供は基礎免疫として2回接種、2歳以上では1回接種のみ、5歳以上ではこのワクチンの適応はありません。何とか日本でもこのワクチン接種率が90%以上としたいものです。
 しかし任意接種では5%位に終わるのが目に見えています。希望者は海外生活経験者位ではないでしょうか。製薬会社もせいぜい接種率10 %の輸入本数しか考えていません。
巷では接種料金1回7000円位になると言われています。しかしこの価格では幅広く皆様方に接種をよびかけることが出来ません。当院では出来る限り努力したいと考えています。今後はインフルエンザワクチンより、Hibワクチンに全力を注ぎます。勿論水痘、オタフクカゼワクチも接種率90以上を目標に頑張っています。